テレビアニメ「一休さん」で人気の一休宗純

とんちでおなじみの『一休さん』。
説話やアニメでも有名な一休さんは、室町時代の3代将軍・義満の頃から応仁の乱の頃まで実際に生きていた、臨済宗の僧です。名前は、一休宗純(そうじゅん)といいます。
6歳で寺に入門し、早くから詩才に優れ、発表した漢詩は大変な評判になります。
27歳の時に悟りを開きながらも、もらった印可(悟りを開いた僧に与えられる免状のようなもの)を燃やして寺を出て、以後は詩・狂歌・書画と風狂の生活を送りました。
僧侶でありながら妻を持ち、酒肉をくらう破戒僧ぶり。正月には、ドクロをつけた杖をもって「ご用心、ご用心」と町中をまわりました。これらの一見奇抜に見える行動は、実は戒律や権威に縛られた仏教に警鐘を鳴らす目的があったといわれています。
このような人間味溢れた生き様は庶民の共感を呼び、江戸時代には、一休宗純をモデルにした説話集も作られました。その一休宗純が紹介したとされる『香の十徳』は、現代の香を愛する人たちにもぜひ知っておいていただきたい名文です。
香の十徳(じっとく)とは?
香の十徳は、11世紀の北宋の詩人・黄庭堅(こうていけん)の作です。先述した、一休宗純が日本に紹介したとされています。
感格鬼神(かんかくきじん) … 感は鬼神に格(いた)る
感覚が鬼神のように研ぎ澄まされ集中できます。
清浄心身(しょうじょうしんじん) … 心身を清浄にす
心身を清浄にします。
能除汚穢(のうじょおえ) … よく汚穢(おわい)を除く
けがれやよごれを除きます。
能覚睡眠(のうかくすいみん) … よく睡眠を覚ます
眠気を覚ましてくれます。※『覚』をおぼえると読み、眠りを誘うという解釈も有ります。
静中成友(せいちゅうじょうゆう) … 静中(せいちゅう)は友と成る
孤独な時に心を癒やしてくれます。
塵裡偸閑(じんりゆかん) … 塵裏(じんり)には閑(ひま)をぬすむ
忙しい時にくつろぎを与えてくれます。
多而不厭(たじふえん) … 多くして厭わず
多くあっても邪魔になりません。
寡而為足(かにいそく) … 寡(すくな)くして足れりと為す
少なくても芳香を放ちます。
久蔵不朽(きゅうぞうふきゅう) … 久しく蔵(たくわ)えて朽ちず
長期保存してもいたみません。
常用無障(じょうようむしょう) … 常に用いて障(さわり)なし
常用しても害がありません。
現代まで受け継がれる香の感覚
「香の十徳」は、香の効用を端的に、格調高く表した詩文です。たった40文字ですが、ここに表された香の効能は、現代まで受け継がれている感覚だということに驚かされますね。